ただ、その中で忍野君だけが何故か青ざめていた。


 どうしたのかと見ていると視線が合って、ビクリとされる。

 そのままそろそろと視線をそらされ、ススス、と石井君の陰に隠れられてしまった。


 ん? もしかしてこれ怖がられてる?

 殴ったとき忍野君のことも言ったから?

 いや、こうなるの分かってて殴ったりはしないから!


 内心突っ込みつつ最後に零士を視界に映す。

 分かってはいたけれど、零士は今の状況なんて本当にどうでも良いんだろう。

 愛良しか見ていない。

 どこまでもブレない零士はもはや驚嘆の域に達していると思う。


 そうして永人に視線を戻すと、彼は「いてて……」と顔を歪ませながら鼻の辺りを押さえていた。

 それに対してまた「ごめんね」と話しかけながら考える。



 永人と離れずに済みそうで良かった。

 でも、永人より強くなってしまった上に彼を従わせる主になってしまった。


 好きな人を従わせるとか、私そんな趣味無いんだけどな。


 さっき命令したことは棚に上げつつ、そう思う。



 色んな不安を抱えつつも、とりあえずはハッピーエンドなのかな? と、自分を納得させたのだった。