【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 だって、殴った岸が壁の方にまでとんで行ってしまったんだもの。


 壁に当たってズルズル床に落ちる様子に、室内がシンと静まり返る。

「……え?」

 そんな静かな空間で私の声がやけに大きく聞こえた。


 数拍後、「お、お姉ちゃん……?」という愛良の戸惑いの声が聞こえてきて、次に「聖良……」と嘉輪の呆れた声が私にかけられる。

「あなた、自分が純血種の血を受けて吸血鬼になったってこと忘れてない?」

「え?」

 軽く振り返って困り笑顔を浮かべている嘉輪を見た。


「血を受けただけで純血種と同等になるわけじゃないけれど、それでも他の吸血鬼よりは強い存在なのよ?」

「……え?」


 吸血鬼の血の力みたいなものは感じるから吸血鬼になった自覚はある。

 でも、他の吸血鬼とそこまで差があるとは思っていなかった。


「しかももう完全に動けるようになったみたいだし……。思い切り殴ったらこうなるのは当然ね」

 最後にはそう言って呆れのため息をつかれてしまう。


 ……つまり、今のこの状況は紛れもなく私がやったことってわけだ……。


「っ! ごめん永人!」

 理解すると流石に罪悪感の方が勝る。


 だって、仕方がないとは言え騙されて血の結晶を飲まされたんだ。

 少なからず腹は立つし、その分くらいは痛い目見てよって思って殴った。