【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 ずっと俊君を見つめていて、箸が全く進んでいない程だ。


 じゃあ他の二人はと言うと、こっちは昨日とほぼ変わりない。

 俊君との会話を楽しんでいる。


 それなら私も会話に混ざれば良いじゃない。
 とも思ったけれど、話している人が多すぎて入り込む隙がない。


 という訳で、私は一人どうしようかと考えていた。

 でも、お弁当を食べ終わって片付けても何かを考えつくことはなくて、本当にどうしようかと悩む。


 昼休みが終わるまでまだ二十分以上はある。
 その間ずっとここにいるのは結構辛い。

 ちょっとでも良いから離れたいなぁ……。

 そう思い、取り敢えず立ち上がった。


 するとすかさず俊君が反応する。

「聖良先輩、どこ行くの?」
「えっ?……とぉ……」

 ずっと話しっぱなしの俊君がまさかわざわざそんな事を聞いてくるとは思わなくてちょっと驚いた。

 でも一応護衛だもんね。
 当然と言えば当然か。


 でもだからと言って、ちょっと離れようかと……なんて正直に言うと俊君は付いて来るだろう。

 この人垣から離れたいのに、俊君が来たら人垣もゴッソリついて来そうだ。


 私は逡巡(しゅんじゅん)して答える。

「ちょっとトイレに……。ついて来なくていいからね?」

 嘘をつき、一応念を押す。