【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 でも、今の状況だとその笑顔ですら悲しく思えて……。

 胸がギュッと苦しくなった。


「永人……」

 もう一度名を呼び、涙が滲む。

 そんな私に、岸は――永人は語りかけた。


「もっと呼んでくれ、聖良」

 片手がまた私の頬を包み、顔が近づく。

 キスされるんだと分かった。


 普段だったらみんなが見ているからと拒否するところだけれど、今この瞬間の逢瀬しかないというならば受け入れたい。

 まだ、諦めて欲しくないと願っているけれど……このキスを拒む理由はなかった。


 そして唇が触れる直前、ひそやかに語られる。

「そうして名前で呼んでくれる限り、俺はお前の望むとおりにするから……」

「え――っん」

 聞き返そうとする言葉は、永人の唇に押し込められた。

 今のはどういう意味?

 そう聞きたいのに、キスは深くなるばかりで……。


「んっんんぅ⁉」

 違う。

 深いというより、完全に塞がれている。


 キスをされながら鼻だけで息をするのも限界がある。

 それなのに、永人は私の鼻をつまむように手を動かした。


「っ⁉」

 何⁉ 何なの⁉ 窒息させたいの⁉


 永人の行動の意味が分からなくて混乱する。

 何がしたいの⁉ と心の中で叫んでいると、舌の上に何か硬い感触を覚えた。