【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 でも、逃げるための具体的な言葉がないことでどうやって逃げればいいのかは嘉輪にも分からないんだと知った。

「……とにかく、逃げるためのチャンスを見逃さない様にしましょう」

「うん」

 私は頷いて、前を見る。


 諦めない。

 諦められない想いだから。

 だから、絶対に逃げ切ろう。


 もうすぐ会える私の“唯一”に向かって、心の中で語り掛けた。


***


 連れて来られたのはいつもの会議室。

 見届ける為か見張りの為か、いつもより人が多い気がした。


 田神先生や零士、婚約者候補の五人。

 あとは何故か鬼塚先輩や弓月先輩といったH生もいた。

 それ以外にも大人の人が数人。


 この人達を振り切って逃げられるかな?


 逃げると決意したけれど、流石に不安が頭をもたげる。

 でも、そんな不安も何もかもが、一人の姿を捉えた瞬間に吹き飛んだ。

「聖良っ!」
「っ岸!」

 支えてくれている二人から離れて、ただ一人を求めて足を進める。

 でもまともに歩けない私は数歩でふらついてしまって……。


「聖良っ」

 同じく駆け寄ってきてくれた岸が支えてくれた。

 その腕につかまり彼の様子を見る。


 顔色が悪い、ということはないから聞いた通り体調は良いんだろう。

 でも、明らかに気疲れしている様子。