【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 何気無い質問の様に見せかけているけれど、目が期待に満ちている。

 明日のお別れ会に来るのが浪岡君なのか気になるんだろう。


 そんな視線に気づいているのかいないのか、俊君は「明日? 明日はねぇー」とヘラヘラ笑いながら答えた。

「俺と零士だから、こっちに来るのは強制的に俺かなぁ」

「そうなんだ……」
「そうなの⁉」

 二人がションボリする横で有香が嬉々として喜びの声を上げた。


 天と地の差っていうくらい正反対の反応だなぁ。

 にしても、明日も俊君が護衛なのかぁ。


 正直勘弁して欲しい。注目されまくって迷惑だ。
 今日の様子を見るに、昨日の浪岡君の方がまだ落ち着いていたし。


 でも、だからと言ってまた知らない人が来たり、零士が私の方についてきたりというのはもっと勘弁して欲しい。

 間をとって俊君、って事で納得するしかないのかな。
 どうせ変えられないし。

 はぁ……と小さくため息をつき、私はお弁当箱を広げる。



 ……そして食べ終わる頃には私は孤独を楽しんでいた。

 なんてね……。
 勿論本当に楽しんでる訳じゃないよ。
 イヤミだよ嫌味!


 周囲を人が取り囲んでいると言うのに、彼らの目的は俊君ただ一人。
 私なんてお呼びじゃない。

 昨日は有香が話し相手になってくれたけれど、今日は期待出来そうにない。