【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

『“唯一”を見つけた吸血鬼の邪魔をすることは基本的に許されない。それはいずれ自分に返ってくるかもしれないことだから』

 そう説明してくれたのは目の前の嘉輪だったはずだ。


「上層部の決定よ」

 感情を押し殺した嘉輪の言葉が、まるで冷水を掛けられたかのように降りかかる。

 もう一つの記憶が蘇る。


『“唯一”を奪おうとするなんて普通の吸血鬼なら考えない』

 確かそれは、私と岸を月原家の別邸に連れて行った男が口にした言葉。

 私は普通じゃなければあり得ると受け取ったんだっけ。


 つまり、今回もその“普通じゃない”吸血鬼の思惑があっての決定だということ。


「あなたが岸の“唯一”だって聞いたとき、私彼と逃避行するしか一緒にいられる未来はないって言ったわよね?」

「あ……」

 そうだ。
 あのときも上層部は許さないだろうみたいなことを話していた。


「でも、だって……あのときとは状況が……」

 今は私も吸血鬼になった。

 私にとっての“唯一”である岸を離そうとするなんて……。

「私の気を狂わせたいの?」

 震える声で口にする。


 “唯一”を奪われた吸血鬼はもれなく気が狂うと聞いた。

 実際、今話を聞いただけでもおかしくなりそうだ。


 一緒にいたいと願った人。