それが事実なんだろうってことは今の自分の状態を思えばすぐに理解出来る。


 嫌だ。
 怖い!


 純粋な死への恐怖。

 吐き気のような気持ち悪さも強く感じて辛い。


 でも――。


「っ! 嘘だ……聖良……嫌だ、行くな……」

 今にも泣きそうな、すがるような岸の表情が一番辛い。


 そんな顔、して欲しくないのにな……。


「聖良……聖良……」

 震える声で私の名前を繰り返す。

 頬に触れる手も震えているのが分かった。



「シェリー! あなた、なんてことを⁉」

 怒りに満ちた嘉輪の声に、シェリーは淡々と答える。

「その子が言ったのよ? 逃げることを考えたらって」

 そして(わら)う。

「だから逃げるための力をもらったの。劣化版の“花嫁”がどの程度のものかと思ったけれど、素晴らしいわね」

 次いだ声がこっちに向かってきたことで、シェリーが私を見たのが分かった。


「ありがとう、これで難なく逃げられるわ。今度こそ本当に会うことはないでしょうね……さようなら」

 嫌味なほど優しい声を残して、シェリーの気配が消える。


「っく!」

 悔し気な嘉輪の声が聞こえて、すぐに彼女も近くに来てくれる。

「聖良……」

 真っ青な顔が、私を覗き込む。