【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「“唯一”で両想い状態なのにその御当主様は愛良や私に子供を産ませようとしているってこと⁉」

 なんてクズなんだと思いながら叫んでしまう。

「そうしようとしているのは彼じゃないわ!」

 すると、今までため込んでいた怒りを解放するかのように怒鳴りだしたシェリー。

 憎々し気に私を睨んでくるけれど、その憎しみは私ではない誰かに向けられている様だった。


「あなた達に彼の子を産ませようとしているのは月原家の老害たちよ! 彼はただ、月原家を見限れないだけ……優しい人なの……」

 怒りと憎しみを吐き出すように言い放つと、打って変わって優しく悲し気な表情になるシェリー。

 その様子だけで、彼女がどれほど御当主様を思っているのかが伝わってきた。


 胸がギュッとわし掴まれる。

 どんなに想っていても、周囲が認めない。

 その状況が少し私と被って見えて、同調せずにはいられなかった。


 でも、だからといって私が出来ることはない。

 その老害たちの思い通りにすることなんて問題外だし、悔しそうにしながらもそれに従っているシェリーに手を貸すことも出来ない。


「ま、それが分かったところでこっちが従う義理はねぇな」

 岸は冷たく跳ねのける。

 冷たすぎなんじゃ……とも思ったけれど、変に同情したところで出来ることはないんだ。