【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 少し苦みを加えたような笑みを浮かべているのは、以前愛良を連れて行こうとしていたシェリーだった。


「……会いたくはなかったんですけどね」

 軽く悪態をつくように言うと、「それはお互い様よ」と返される。


「今回はお前がこっちか……じゃあ、妹の方は御当主サマが直々に相手をしてるってところか?」

 皮肉を込めたような岸の言葉。

 その皮肉が何に対して言われたものなのかは分からなかったけれど、シェリーは苦々しい表情を見せた。


「……あんたには関係ないでしょう?」

「ま、そうだな」

 と、岸はとぼける。


 何の話なのか気にはなるけれど、今はそれを追求している暇はない。

「……愛良は、どこにいるの?」

 正直、ダメ元な気分だった。

 それでも聞かないわけにはいかなくて口にする。


「今そいつが言ったでしょう? 御当主様のところよ」

「連れて行って」

「それで私が連れて行くとでも?」

 はっと嘲るように笑われた。

 ま、そうなるよね。


「それにしてもあなたは本当に妹のことばかりね。前もそうだったけれど」

 そう感想を呟くと、今度は岸をあざ笑うように見た。


「相変わらずじゃない? 岸、あなたこの子の妹に負けてるんじゃないの?」

「負けてなんかいねぇよ。……お前と違ってな」

「っ! うるさいわね!」