【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 それと一緒にこじ開けられた恋の種。


 何より、自分でも気づかなかった私の心の溝を埋めてくれる言葉。

 思えば、あの瞬間から岸に惹かれてしまっていたのかもしれない。

 無意識に強く求めていたものを与えてくれる相手として。


 そして、その思いは会えない間に強くなっていたらしい。

 静かに、降り積もる雪のように、確実に私の心を塗り替えていった。


 そうして迎えた邂逅(かいこう)

 三度目のそれは、私が思っていたよりも強く、切なく、狂おしく……。

 考える余裕なんてないくらい、すべてを持っていかれてしまった。


 そして今。

 思いを返すことが出来た私を岸は一番に考えてくれる。

 私を守ろうとしてくれる。


 好きで、どうしようもなく惹かれて……。

 愛してると、言えるのかもしれない。


 まだ言葉で伝えていないそれらの思い。

 事が無事終わったら、すべてを伝えたいと思った。

 そして、岸のすべてを受け入れよう、と……。

 そんな決意をしながらも今は前を歩く男についていくしかない。

 そしてついていって邸宅の中に入ると、奥まった場所にある一室に案内された。

 そこで待っていた相手は――。


「こんにちは。もう会うことはないと思っていたのに……また会ってしまったわね?」