「あのときV生の中にうちの者を忍び込ませたんだよ。時が来たら、内側から守りを崩してもらうためにな」

「V生に?」

 誰も考えていなかった事実に驚きしか湧いてこない。


「一応作戦はうまくいったようだな。“純血の姫”があっちに向かったとさっき車の中でメールをしたら、了解の返事とともに作戦成功のメッセージが届いた」

「っ!」

 ということは、本当に愛良はここに連れてこられたってこと?


「……愛良は、まだここにいるの?」

 声が固くなる。

 せめてここにいてくれれば嘉輪たちが間に合うかもしれない。


 でも、男もそこまでは分からないようだった。

「さあな。着いてはいるだろうが……」

 どうだろうな、と前を向いてしまった。


「……聖良」

 そうすると、今度は岸が私に声を掛けてくる。

「お前はやっぱり妹を助けたいんだよなぁ?」

 確認の質問。

 私は当然とばかりにうなずいた。


「もちろんだよ」

「それでお前が危険な目に遭うかもしれなくてもか?」

 答えなんて分かってるだろうに。

 それでもわざわざ聞いてくるのは、私の身を案じてのことだよね。

「……遭わないよ。あなたが守ってくれるんでしょう?」

「ったく……それ、結構な無茶ぶりだって分かってんのか?」

「……ごめんね」