【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 そんな視線の中を拷問されている様な気分で乗り切り教室に着くと、今度は席に着く暇もなく主に女子のクラスメートに取り囲まれる。


「ねえ、その人誰⁉」
「浪岡君はどうしたの⁉」

 当然ながら、俊君に関する質問ばかり。


「この人は赤井 俊君。今日の護衛。浪岡君は来ないよ」

 と一息で答えながら彼女達の間をくぐり抜け、何とか席までたどり着く。

 でもそこで安心出来た訳じゃ無かった。
 まだまだ質問したりないとクラスメートは付いて来て席の周りを取り囲んでいるし、昨日浪岡君を気に入っていた友達は「何で浪岡君じゃないのよー」と嘆いているし。

 朝の時点で昨日の倍以上の騒ぎだった。

 そんな中人混みを掻き分けて有香が顔を出した。

「あ、有香おは――」

 おはよう、と言い終わる前に肩を乱暴に掴まれる。

 痛いんだけど⁉


「せせせ聖良! その人、誰⁉」

 慌てた様子が気になったけれど、取り敢えずさっきから繰り返している言葉をもう一度有香に言った。


「赤井 俊君だよ。今日の護衛。ちなみに一つ下の高一」

「赤井……俊君かぁ……」

 私の言葉を反芻(はんすう)する様に呟きながら、有香はウットリと俊君に視線を移す。


 あれ?
 この反応って……。


 今の有香の反応が、昨日の友達二人の反応と似ている気がする。