【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 もしかして助けてくれたの……?

 少し前の無表情も覚えているからすぐには信じられないけれど、状況的には助けてくれたと見て良いのかな?


 そんな風に考えながら鬼塚先輩を見ていると、一通り倒し終わった彼に腕を強く引かれた。

「聖良、こっちだ」

 立たせようとしてくれたみたいだけれど、足に力が入らなかった私はもつれて前に倒れ込むようにへたり込んでしまう。

 でも鬼塚先輩はそんな私を叱るでもなく苦し気な表情を浮かべ、私をかばう様に他のH生との間に入った。

「……鬼塚……おまえ、裏切るのか?」

 殴られたところを痛そうにさすりながら、怒りを滲ませた声で聞かれる。

 対する鬼塚先輩は冷静な様子で言葉を返した。


「裏切る、ね……元々こうするために話に乗ったからな。裏切るも何もねぇよ」

「何だと⁉」

 彼らの問答を聞きながら私は取り合えず口に入れられた布を取った。

 やっとまともに呼吸が出来て大きく息を吐く。


「大体聖良が“花嫁”なのと、岸の“唯一”だってのは全く別のことだって言っただろ?」

「それはお前が持ってる間違った知識だろ⁉ 俺はV生から直接聞いたんだ!」

「はぁ……そうやって人の話をちゃんと聞かないからこうやって仲間のフリするしかなかったんだろうが」