【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 産むわけないでしょうがーーー!!


 位置さえあっていれば、そのまま頭突きでもしているところだった。

 でも彼の頭は私の横にあったし、その後すぐに届かない位置まで離れてしまう。


 だから代わりに睨みつける。


 この状況で好きだなんて言葉信じられるわけがないし、当然ながら鬼塚先輩の子供なんて産む気は無い。

 というか、まずそのための行為をするつもりもない。


 私の睨みを受け止めた鬼塚先輩は、フッと笑う。

「ま、そりゃ嫌だよな?」

「?」

 その表情は、私をあざ笑うようなものではなくて……。

 どちらかと言うと、仕方ないよなという諦めと悲しみの表情。

「おい! 鬼塚、何やって――グフッ!」

 なかなか進めようとしない鬼塚先輩にしびれを切らしたのか、またさっきのH生が非難の声を上げようとする。

 でも、最後まで言い切る前にその顔に鬼塚先輩の拳が入った。


「な……鬼塚⁉」

 私の手足を押さえつけている他のH生達も驚いているスキに鬼塚先輩に倒されていく。


 え? 何が起こって……?


 目まぐるしい状況に私もついていけない。

 さっきまで私を犯そうとしていた人が、私を押さえつけている人達を殴っている。


 その前に浮かべた鬼塚先輩の表情は、どちらかと言うと普段の顔に近かった。