【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 そのままさらに引かれて、私は(はか)らずとも岸の胸に抱かれてしまう。


「っちょ⁉」

 抗議の声を上げようとしたけれど、その前にギュウッと抱き締められた。

 その体温に。
 その力強さに。

 心臓がドクリと大きく鳴る。

「聖良……忘れんなよ? お前は俺の唯一だ。何が何でも手に入れっからなぁ」

「っ⁉」

 唯一の意味は分からない。

 でも、今まで以上に強く求められている事だけは分かった。


 そして、それに対して私が何を思ってしまったのかも……。


「……じゃあな」

 名残惜しそうに私から離れた岸は、最後にもう一度唇を重ねて去って行った。

 私はそんな岸を引き留めることも、追いかけることも出来ずにその場に突っ立っていることしか出来ない。

 岸の姿が消えた方を見続け、最後に触れた唇に指先で触れた。


「……なんで……?」

 どうして、私は……。


 自分の心が分からない。

 どうして嫌だと思わないのか。


 キスをされて、抱きしめられて……。

 無理やり奪おうとしてくる相手なのに……。


 どうして、嬉しいと思ってしまっているんだろう……?


 私は鬼塚先輩が慌てた様子で探しに来るまで、そのまま自問しながら突っ立っていた。

***