【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 嫌だ。


 強く湧き上がってくる単純明快な感情。

 色んなしがらみを取っ払って出てきた答えに、私は考えるより先に体が動いた。


 岸の近くに歩み寄り、しゃがむ。

 そして首元を緩めて首筋をあらわにした。


「……いいよ、血を吸っても」

 言っておきながら、私は何を言ってるんだろうと内心自嘲する。

 こんなことをしたら岸は力を取り戻してまた私に酷いことをするだろう。
 捕まえることも出来なくて、また逃がしてしまうかもしれない。

 それでも、こうすることに不思議と後悔はなかった。


「…………は?」

 岸は、私のまさかの行動にただただ驚く。

 鳩が豆鉄砲を食らった顔ってこんな感じなのかな?

 いつもニヤニヤしている岸の表情をここまで驚きのものに変えられて、ちょっと満足した。


「あ、でも変なことはしないって約束して。あと、力が戻ったからといって私を連れ去ろうとしないで」

 そんな約束をしたところで守ってくれる確証はなかったけれど、言うだけは言ってみる。


「……この厳戒態勢の中、お前を連れて逃げるのはどっちにしろ無理だっての。変なことってのがキス以上のことを言ってんなら……まあ、努力はする」
「ちょっと⁉」

 そこは分かったで良いんじゃない⁉


 非難する私の声はスルーされて、岸は探るように私を見る。