【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 そんな相手でも、弱っているところを見ると無下に出来ない。
 思わず、助けの手を差し出してしまう。


 今だって、弱っている岸から逃げるのは簡単なことだと思う。

 操られている工藤さんはいるけれど、命じるはずの岸がこれじゃあ大したこともできないんじゃないかな?

 だから、今すぐここから逃げて護衛の人達に助けを求めればいい。

 そうすればきっと岸も捕まえられる。


「……」

 でも、捕まった岸はどうなるんだろう?


 ふと、そこに思い至った。

 少なくとも学園には戻れないだろう。
 多分、退学処分とかになるんだと思う。

 あとは、愛良を狙う月原家に協力していたのと、私を狙っているという理由から私達から離される可能性が高い。

 多分、もう二度と会えなくなる。


「っ⁉」

 瞬時に湧いてきた感情に私自身戸惑う。

 どうして?
 どうしてこんな奴に会えなくなるのを嫌だと思ったの?

 むしろ安心するべきことなのに。


 自分自身のことが一番分からなくて混乱していると、そんな私をジッと見ていた岸が口を開いた。

「……逃げねぇの?」
「⁉」

「多分、今の俺はお前を捕まえておくことすら出来ねぇよ?」

 そう言って自嘲した岸は、夢で見たような諦めの表情をした。

 諦め、それを受け入れ慣れた悲しい笑み。


 ……ダメ。