全て甘えてしまっても良いんだろうかという気持ちも少しあったけれど、すでに準備しているものを遠慮するのもどうかな、となかば無理矢理納得させる。


「そうだったんだ……」

 他に言葉が出てこなくて、そう答えた。


 そんな会話がひと段落した頃、聞き慣れた声が聞こえてくる。

「あ、お姉ちゃん! ごめんね待たせて」

「ううん、そ――」

 そんなに待ってないから、と続けようとした言葉は紡がれることはなかった。

 何?
 何なの?


 愛良……何で赤井と手なんか繋いでるわけ⁉


 表情にはあまり出さなかったけど、私はかなりの衝撃を受けていた。

 でもその疑問を軽々口にして良いものかも分からず、口を閉ざして固まる。


 そんな私とは対照的に、浪岡君は呆れた様な息を吐く。

「……もしかしてまた迷ったんですか? 零士先輩」

「……は?」

 迷った? 赤井が?


 疑問の声を上げる私とは違い、愛良は困り笑顔で答えた。

「そうなの。学校でも何度も迷ったんだけど、帰りも散々迷いかけて……」

 その続きは言葉を濁したけれど想像に難くない。


 帰りも散々迷いかけたから、最終手段で愛良が手を繋いで連れてきた、と……。


 ……ぷっ!

 ヤバイ、本気で笑えるんだけど。