「土曜日に引越しで、月曜日から転入するって事くらいしか……」

 私は昨日のことを思い出しながら答えていく。


「あ、あとはベッドとか生活に必要な物は用意するって言われたかな?」

「ああ、そうですか……。ちゃんと伝わってなかったんですね」

 軽く脱力した様なため息をつき、困り笑顔で浪岡君は続けた。


「田神先生が言った必要な物っていうのは、着替えや個人的私物以外の全てですよ」

「は?」

「着替えやスマホなどはもう持っているでしょうし、こっちで準備する訳にもいかないので(はぶ)かれますけど。それ以外、ベッドからドライヤー、歯ブラシなどは用意しますよ?」

「え? ホントに?」


 歯ブラシとかタオルとかを買おうと思っていた私は、それすらも用意すると言われて呆気に取られる。


「ホントです。それらを用意するための三日間ですから。それに、住んでみて足りない物は田神先生に言えば用意してくれるはずですよ?」


 ポカン、と口を開けて固まってしまう。

 なんと言うか……至れり尽くせりだ。


 そりゃああっちが勝手に決めた転校で、こっちには断ることは出来ないって言うんだからそれくらいしてもらわなきゃ釣り合わないという気はするけれど……。


 まあ、買い物の必要性がなくなったのは助かるかな?