【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 責任を感じてるんだろうって思いがはがれてくれない。


 ……違う、それは言い訳だ。

 私が忍野君を好きになることがない、言い訳。


 今、気づいた。

 さっき石井君を見て恋の種が目覚めた時のことを思い出した。

 そして、今その恋の種が忍野君では動きを見せないと思ったら、今の私がどんな状態なのか分かった。


 分かってしまった。

 驚愕に、泣きそうだったことすら忘れてしまう。


 私の恋の種は、芽吹いてはいない。

 でも、種の殻が破られている状態なんだ。
 無理やり、受け入れられるようにされている状態。

 そして芽吹いていないから、自分からは動けない。


 そうだ。
 だからアピールすると言いながらも、私が選ぶのを待つ姿勢でいる忍野君達三人のことを選べないんだ。


 殻を破ったのは絶対にあいつ。

 認めたくないほどムカつくけれど、破るなんて乱暴な真似をするのなんてあいつしか考えられない。


 きっと、あのキスマークを残されたとき。
 執着の証だと告げられたとき。

 あの瞬間に破られてしまったんだ。

 執着するほどの、強い思いを向けられたことなんてなかったから……。


 そしてその破かれたところから入って来るのは二人。

 一人はもちろん破った本人。