【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 そうして並んで歩く忍野君は昨日の二人みたいに手をつないできたりはしなかった。


「手をつないだりとかはしなくていいの?」

 別に率先してつなぎたいわけじゃないけれど、浪岡君も俊君もしてきたからどうなんだろうと思って聞いてみた。

 すると忍野君は、弱々しい笑顔だったけれどハッキリと言う。

「そういうのは、付き合えてからするよ」
「っ! そっか……」

 気安さの中にある誠実な言葉に、少しドキッとしてしまった。

「あーでもどうしよっか? 一応考えてはいたんだけど、香月も体調悪いなら無理しない方が良いし……」

 体調を考慮してくれる忍野君にありがたいと思いつつ、同じくらい申し訳なく思う。


「ごめんね」
 だから謝ったけれど。

「俺だって体調良いとは言えないし、お互い様だって」
 と、気にするなと言われた。

 忍野君は前の学校の同級生で、一年のときには同じクラスだった。

 そういうこともあってか気安く接することが出来る。


 それに、他の皆みたいにそこまでグイグイとアピールして来たりしない。

 だから安心して一緒にいられる人だなって改めて思った。


「あ、映画とか良いんじゃね?」
「映画?」

 そう言えば、デパート敷地内に併設されている映画館があったな、と思い出す。