たまに男のお客さんも見るけれど、それは彼女に連れられて仕方なくって感じだったし。

 女子グループの中に男一人ってだけでも居づらいだろうに、そんな女の子女の子した様な店になんて浪岡君を連れて行けない。


 護衛として付いてきてるだけなんだから気にしなければいい、と言ってしまえばそれまでだけれど、気にしない訳にはいかない。

 となると他には何があったっけ?
 カラオケとかファミレスとか……。

「……無難にファミレスかな?」
 そう言って卵焼きを口に入れた有香。

「うーん……」
 私は箸を持つ手を止めて考えてみるけれど、他に良い場所も思いつかない。


「そうだね。まあ、そんな遠くに行くわけじゃないしまたすぐに会えるでしょ」

 そのときまた色々行けばいいんだし、と考えて私は昼食を再開させた。


 ふと視線を感じてそちらを見ると、浪岡君が悲しそうな――と言うか、申し訳なさそうな目をこちらに向けていた。

 でもすぐに周りの女子との会話に戻っていたから気のせいだったのかもしれない。


 その視線が気のせいじゃなくて、何を意味するのか知るのはもうしばらく後のことだった。

***

 お昼休みも終わってから、他の二人にもお別れ会はファミレスに決まったことを伝える。