【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 家に一旦帰ってからだと時間が少なくなるから、当然学校帰りそのまま行こうとしてたもん。

 という事は必然的に浪岡君はついて来るだろうな。

 もし一度家に帰ったとしても、また外に出ると言ったらついてきそうな気がする。
 私を守るために来てるって言ってたし。

 となると、一度家に帰ってから浪岡君達を帰して、それから家を出るしか……。

 そんな風に策を練っていると――。


「聖良先輩?」

 突然掛けられた浪岡君の声に思わずビクリと震えた。

 その声が少し冷ややかに感じたのは、私が浪岡君の目をかいくぐろうと思考を巡らせていたからだと思いたい。


「な、何? 浪岡君」
「学校以外で出かける場合は事前に言っておいてくださいね? 僕にもそれなりに都合というものがあるので」

 話はちゃんと聞いていましたよ。と言うようにニッコリと笑顔を向けられた。


「う、うん。分かった……」

 周りにいる女子から矢継ぎ早に質問を受けているのに、どうやって聞き分けていたんだろう?
 返事をしながらそう疑問に思った。


 複数の人が話しているのを聞き分けるなんて、聖徳太子みたいだね。

 なんて思っていると、有香が少し大きめに息を吐いた。

「ってことは、お別れ会浪岡君も同行決定ってことね……」

 疲れたような、軽く脱力したような声。