【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 私を通り越してそんな会話がなされると、誰かのスマホが鳴った。


「……はい、準備は出来た? ええ、分かったわ」

 通話をしたのはシェリーだ。

 何の準備が出来たというんだろうか。


 状況の変化に不安が募る。

 そしてそういう不安や嫌な予感というのは、大体当たってしまうんだ。


「準備は出来たみたいよ。じゃあこっちは行くから、あんたもさっさとここを離れることをお勧めするわ」

 電話を切ったシェリーはスマホをしまいながら岸にそう告げた。

「分かってるよ」

 岸が私を抱きしめたままそう返すと、シェリーは愛良の腕を掴んでどこかへ行こうとする。

 そんな、私は愛良と一緒じゃないってこと⁉


「お姉ちゃん!」

 愛良は私と離れ離れにならない様にシェリーに抵抗している。

「愛良!」

 私も何とか岸の腕の中から逃れられないかと抵抗する。


 何度も無駄だと思い知らされたけれど、それでも大事な妹をみすみす攫われてはたまらない。

 無駄でもなんでも、やらずにはいられなかった。


 でも、そういうときのために人質がいるんだ……。


「大人しくなさい! お友達にもっとひどいケガをさせたいの⁉」

「っ!」

 途端、愛良の抵抗が止まる。


「お前もだぜぇ、聖良?……まあ、俺は何しようと逃がさねぇけどなぁ」