【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 そう言って獲物を咀嚼(そしゃく)するような目で見ながら岸は笑う。


 このっ! 好き勝手して!


 岸は怖い。

 でも、段々怒りの方が強くなってきた。


 息を整えながら、キッと睨みつける。

「まだ睨む余裕あんの? もっかいいっとくかぁ?」

 そうしてまた近付いて来る岸だったけれど、制止の声がかかった。

「おい、あまり煽るな。押さえつけるのだって楽じゃないんだぞ?」

 位置的に、俊君を抑えている男のどちらかみたいだ。


「さっさと“花嫁”を連れていけ。こっちはこいつらを拘束出来れば十分なんだ」

「はいはい、分かったよ」

 男の言葉に岸は面白くなさそうに息をつき、私を抱く腕を外した。

 ただし、手首だけはしっかり掴んで。


「さあ聖良、お友達にケガさせたくなかったらついて来てもらおうか」

「っく……」

 了承なんてしたくない。

 でも岸は本気なんだろう。


「……俊君達にも、ケガはさせないで」

 選択肢がないなら、せめてもと条件を付け加える。


 それに岸は答えず、代わりに男達の方を見た。

 岸と男達の関係は良く分からないけれど、完全に仲間っていうのとは違うのかもしれない。


「まあ、動けなくするだけだからな。抵抗しなければケガはさせないさ」