【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 ただただ優しい気持ちで、恋の種を起こしてくれた石井君が辛い思いをする結果にならなければいいと願った。

***

 その日のうちに石井君は田神先生に私が克服出来たことを伝えてくれたらしい。

 翌日には、次の土曜日に田神先生の家に来てほしいと伝えられた。


 そして土曜日――。


「……何で護衛があんたなのよ」

 先生たちやデパートの従業員などが暮らす住宅街へ向かうためのバスを待ちながら、私は今日の護衛に不満を零していた。


「知るか。斎に直接頼まれたんだから仕方ねぇだろうが」

 言い返してくるのは勿論零士。

 零士以外だったら別に不満とかないのに、どうして田神先生はこいつに頼んだのかな?


「とにかく、今日斎にお前が克服出来たって認められればお前の護衛も強制じゃなくなるんだ。絶対に認められろよ?」

「言われなくったってそのつもりよ!」


 全く、本当に一々憎たらしいんだから。


 そうして二人でバスに乗り、十分ほどで住宅街に着く。

 バスを降りてさあ田神先生の家へ、となったんだけれど……。


「ちょっと、そっち逆方向じゃない?」

 いきなり零士が逆方向の道を歩き始めて注意する。


「……」

 零士は足を止めると無言で戻ってきた。


「……」
「……」

 何か言えよおい。