「あたしの方が狙われやすいからって言われて、言われるままに守られてきたけれど……そうしたらお姉ちゃんが襲われた」

 段々愛良の声が震えてくる。

 泣かせたくないと思っていたけれど、流石に無理だったか。


「だから、ちゃんとお姉ちゃんを守って下さい。あたしには浪岡くんもいるし、他の先輩たちも駆けつけてくれます」

 目じりに涙を溜めていたけれど、決して流さず意志の強い目でそう言った愛良は格好良かった。


「……」

 愛良……。

 ずっと、愛良は私が守ってあげなきゃと思っていた。

 でも、こんなに強くなってたんだね。


 ……ううん、違うか。

 もっと、ずっと前から分かってた。
 ただ、私が愛良を守ることで自分は必要な存在なんだって思いたかっただけかもしれない。

 そうすることで自分を守っていたんだ。


 ……いや、愛良を守りたいって気持ちも嘘じゃないけどね。


「……分かったよ。愛良、お前がそこまで言うなら……」

「ありがとうございます」

 渋々頷いた零士に、愛良はホッとした笑顔を向ける。

 その笑顔の中に少しだけ寂しさを感じ取ったのは、多分私だけだったろう。


 愛良……やっぱりあなたは……。

 愛良の寂しさの意味を理解した私は、胸の奥がモヤモヤとしてくるのを感じた。