吸血鬼をでっかい蚊扱いしたことにちょっとショックを受けているみたいだった。


 ……ちょっと極端な表現過ぎたかな……?


 私の表現が相当受け入れ辛いのか、二人はしばらくぶつぶつ言っていた。

 なので、私は室内のベッドの方を見る。

 先に岸に襲われていたH生の女子生徒がそこで眠っていた。


 彼女の診断は貧血。

 血を多めに吸われてしまったんだろうとのことだ。


 それ以外にケガなどはしていないし命に係わるほどの量ではないから、しっかり休んでから病院に行って鉄剤を処方してもらえれば大丈夫だろうと高峰先生が説明してくれた。

 少なくとも彼女の助けにはなったんだと思うと、みんなに迷惑と心配をかけてしまったことへの罪悪感が少し軽くなった気がする。


 その彼女の首筋にはキスマークのような(あざ)が二つ並んであった。

 それは、私の首筋にも残っている。


 岸に咬まれた印だ。

 吸血鬼の唾液には治癒効果があるらしく、咬んだ後に咬み傷を舐めることで傷が塞がるんだそうだ。

 ただ、痕は残るのでキスマークのような小さい痣が出来るんだとか。


 正直、血を吸われたことよりもこっちの方が嫌だった。

 あんな嫌な奴にマーキングされたみたいで。

 キスマークみたいに見えるってのもまた嫌悪が増す。