「ひゃっ!」

 冷たさに軽い悲鳴をあげて目を閉じる愛良。

 それでも既に腫れてきて熱を持っていたのか、すぐに心地良さそうに安堵の息を吐いた。


「大丈夫? 愛良、口の中は切れてない?」

「……うん。ちょっと口内炎みたいにはなりそうだけど、大丈夫」


 それはやっぱりちょっとは口の中も切れてたって事じゃないかな?

 まあ、でも頬よりは酷くはないか。


 とりあえずそう納得していると、愛良が嘉輪の方を見る。


「それより、その人は? お姉ちゃんの友達?」

 聞かれて、そう言えば紹介していなかったことに気付いた。

 バタバタしていたし、愛良の頬を冷やすのを優先していたから。


「うん、同じクラスで隣の席の波多 嘉輪。吸血鬼だけどハンターでもあるんだって」

「は? 吸血鬼なのにハンターなの? え? それって良いの?」

 数時間前の私とほぼ同じ反応に、嘉輪は苦笑しつつ挨拶をする。


「気軽に嘉輪先輩とでも呼んで。VH生はまだ数は少ないけどね。でも中等部にもいたはずよ? クラスにはいなかった?」

「え? あ……えっと、クラスのみんなは何だか探る様な視線を送ってくるだけで話しかけてもくれなかったから……」

 視線を泳がせてから、観念したようにポツリと話してくれた。


 探る様な、値踏みするような視線は私も受けていた。