そんな愛良の手を引いたところで嘉輪が声を掛けて来た。

「私も行くよ。保健室の場所まだちゃんと分からないでしょう?」
「うっ……お願い」

 保健室にお世話になることもそうそうないので、特に場所は把握していなかった。
 だから案内は素直に嬉しい。

「ここからなら高等部の保健室の方が近いから、そっちに行こう」


 そうして三人で歩き出してすぐの角を曲がろうとしたとき、その角から慌てた様子の男子生徒が一人現れた。

 その彼の姿を目にした瞬間、私は怒りが爆発してしまう。


「……あんた……今更何をのこのこ来てるのよ、零士っ」

 色々な鬱憤(うっぷん)も溜まってて、八つ当たりも入ってるって自分でも分かっていた。
 でも、止められなかった。


「愛良の事守るって言ってたじゃない。全然、守れてないじゃない!」

「何っ⁉」

 私の言葉にすぐに反発しようとした零士だったけど、愛良の方に目を向けて声が途切れる。


「殴られた、のか……?」

 呆然と呟く零士を私は無視した。

「嘉輪、早く行こう。愛良の頬冷やさなきゃ」
「……そうね」

 嘉輪は何も言わず案内のため先を歩いてくれる。


 愛良は零士を気にしていた様だったけれど、私に手を引かれていたのもあって何も言えずにその場を後にした。



 零士は後をついてこない。

 正直ホッとした。


 言った事は後悔して無いけれど、八つ当たりが入ってしまった事は少し申し訳なく思ってしまったから。


 そうして保健室へ急いで、愛良の頬を冷やす事が出来てからやっと落ち着けた。