【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 それで暴力を振るうとか……どちらが悪いのかなんて明白だった。


 彼女達も本当は分かっているんだろう。
 だから言葉が出てこないんだ。


「大体、あなた達自分の事しか考えてないでしょう? “花嫁”の立場になって考えてみた? 彼女達は突然“花嫁”だって言われてこの学園に転入させられたのよ?」

「っ! そ、れは……」


 ……呆れた。
 どうやら本当に自分の事しか考えていなかったらしい。


 みんながみんな、言われてはじめて気が付いたといった様子だ。


 これが私達を守ってくれるはずのH生、ハンター達か。

 弓月先輩みたいに頼れる人もいるけれど、完全には信頼出来ないな。


 それが私の率直な気持ちだった。


「……だから、もうやめなさい。ほら、解散」

 軽くため息をついた嘉輪の言葉を聞いて、集団はパラパラと散っていく。

 まだ何か言い足りないと言った表情も多かったけれど、嘉輪の存在を気にしている様でこの場から去っていった。


 嘉輪って何者?
 さっきの純血の姫っていうのと関係がある?


 そんな疑問が頭を()ぎったけれど、今はもっと大事なことがある。

「愛良、ほら。保健室行こう」
 私は愛良に向き直り急かした。

「あ、うん……」
 愛良は状況に付いて行けないのか、少し呆然としながら返事をする。