【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 彼女たちに謝らせたいとか、他にも思うことはあったけれどまずは愛良の治療が先だ。

 このわからずや達の囲いをどう突破しようかと考え始めたとき、囲いの外から嘉輪の声がした。


「そこまで。あなた達、やりすぎよ」
 冷静な声は、良く通ってその場に響く。


 私も少し冷静になれた。


 その場のみんなが嘉輪に注目する。
 ただ言葉を発しただけなのに、目を向けずにはいられないカリスマみたいなものがあった。


 嘉輪って凄い。


 そう思った私の耳に、集団の誰かの呟く声が聞こえた。


「……純血の姫……」


 純血の姫?
 って、嘉輪のこと?


 意味はよく分からなかったけれど、姫というのはピッタリだと思った。


 美人で、かっこよくて。
 可愛いところもあるけれど、凛とした雰囲気も良く似合う。

 まさにお姫様という感じだ。


「少し様子を見ていたけれど、暴力まで振るうならやりすぎとしか言いようがないわ」

「だって、それはこの子がっ!」


 嘉輪の言葉に反発するように誰かが叫ぶ。
 でも、続く言葉は出てこない。


 愛良が何を言ったのかは分からないけれど、そんなに酷い言葉を口にしたとは思えない。
 愛良は性格悪くないし。


 ただ、その言葉が彼女達の癇に障っただけだ。