【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 バチーンと派手な音が校舎裏に響き渡る。
 目を向けると、愛良がさっき叫んでいた子に頬を叩かれたところだった。

 それを目にした途端、私は何も考えす足を動かす。


「あ、聖良! まって、私も――」
 嘉輪の声も聞こえたけれど、私に待つという選択肢はなかった。

 飛び出して、集団をすり抜けて愛良のところへ向かう。


「愛良!」
「……お姉ちゃん?」

 愛良の近くに行くとすぐに叩かれた頬の状態を見る。

 口の中は切れてないだろうか?
 頬は……駄目だ、これはすぐに冷やさないと()れる。


「な、なによあんた。突然出てきて」

 そう誰何(すいか)の声を掛けられたけど、その質問は無視して私は彼女を睨みつけた。


「……どいて」
 怒りから声がいつもより低くなる。

「あ、あんた“花嫁”の姉の方……。丁度良かった、あんたにも言いたいことがあったのよ」
 私が愛良の姉だと気付いたらしく、彼女は気を取り直してそんなことを言う。

 大方私にも、あの五人から結婚相手を選ぶなとかいう話だろう。

 そんなどうでもいい話、聞くつもりはない。


「あなたの無駄話なんて聞くつもりはない。……どけ」

 どくつもりのない彼女たちに、最後には口も悪くなってしまった。


 早く愛良の頬を冷やさないと。