【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「とりあえず、愛良の血が特別なんだってことは分かりました。でもそれとこの学園に転入するのとどう関係があるんですか?」

 一番大事なのはそこだ。
 こんなに急いで転入する必要があったんだろうか。


「一番の理由は吸血鬼の花嫁は吸血鬼に狙われるから、という事かな? 昨日や今日がそうだったように、愛良さんを攫って血を吸ったり子供を産ませようとしている吸血鬼は沢山いる」

 サラリと口にした言葉だったけれど、それはかなり卑劣なことじゃないんだろうか?

 だって、好き好んで血を吸われたいなんて思わないし、子供を産ませようとって……無理矢理そういうことをするってことでしょう?


 冗談じゃない!
 愛良をそんな目に遭わせるなんて絶対駄目!


 横に視線を向けると、愛良も同じように理解したんだろう。膝の上で拳を握り、少し青ざめているように見える。


 もしかすると、昨日や今日襲ってきた相手に何か言われたりされたりしたんじゃないだろうか。
 大丈夫何て言っていたけれど、それが真実とは限らない。

 私を安心させようとついた嘘かもしれないし。


 私は硬く握られたその手に自分の手を乗せる。

 無責任に大丈夫だよなんて言えないけれど、少しでも安心出来れば良いと思って。


 私の気持ちが通じたのか、少し拳を握る力が緩んだ気がした。