「うん……何て言えば良いか……」

 考えていることを隠すつもりはない様だけれど、それを上手く言葉に出来ないみたいだった。


「今日襲われた事と関係ある事だよね?」

 それ以外には考えられないけれど、話を促す意味でもそう聞いてみる。


「うん……」

 でも頷いただけで、愛良はまた黙り込んでしまう。

 言葉を選んでいるんだとは思うけれど、今は人を待たせてる状態だ。
 あまり長くは待っていられない。


 言葉を選びやすい様にもっと質問した方が良いかなと思って口を開きかけると――。

「零士先輩達……ううん、あたし達を狙ってるっていう人達も、人間じゃないかも知れない」

 なんて言い出した。


「え? それって……」

 私は驚いて思わず聞き返したけれど、別に答えを求めていた訳じゃない。
 だって、少なくとも零士達が人間じゃないかも知れないっていうのは、昨日話した内容そのままだから。


 私は一度深呼吸してから、確認の意を込めてちゃんと聞き返した。

「……それはつまり、愛良を狙ってる連中とのやり取りを見て、どっちも人間じゃないって思える様なことがあったって事だよね?」

 真っ直ぐ視線を合わせて言うと、「うん」とはっきり答えが返される。


「田神先生は引越しが済んだら教えてくれるとしか言わないし……」


 それで色々考え込んでしまったという訳か。


 確かに俊君も色んな事を隠してて、後で田神先生から話があるとしか言わなかった。


「……何にせよ、これから城山学園に向かって引越しが終われば全部教えてくれるって事だよね」

 自分の頭の中を整理する様に呟いてから私は立ち上がる。


「愛良、だったらサッサと準備終わらせて行こう。そして、隠してること全部吐かせてやろうじゃない」

 ニヤリと笑って言うと、愛良も「そうだね」と笑って同意してくれた。



 本当に、隠してる事ぜーんぶ暴いてやるんだから!


 私はそう意気込みながら、荷物の準備を終わらせた。