まだ生きてはいるみたいだったけれど、首の辺りが血で染まっていたんだ。

 手当てを急いだほうがいいに決まっている。


「あの人?」

「私がここに来る前に襲われていた人です。あっちに!」


 私は慌てて路地の奥の方を指し示しながら櫂人先輩を連れて行く。

 少なくとも、櫂人先輩は助けてくれると思ったから。

 倒れている女性の近くに来ると、櫂人先輩はすぐに女性の容態を診始める。


「これはまずいな。すぐに止血しないと」


 そう言いながら女性の首筋を拭うと、彼はそこに顔を近付けた。


「……え?」


 櫂人先輩が女性の首筋に吸い付き、何かを嚥下するように喉ぼとけが上下するのが見える。

 そして唇が離れ、また溢れてきた血を舐めとっていた。