「いやぁ!」


 私は叫び、とっさに掴んでいたものを振り《それ》に叩きつける。


「ぐっ」


 硬いものではないからダメージなんて無かっただろうけれど、そのまま捕まることだけは避けられたみたい。

 その隙を突いて、私は自分の鞄を持ったまま《それ》の横をすり抜けた。

 どうやら鞄はここに隠されていたらしい。

 良かったのか悪かったのか分からないけれど、とにかく手元に戻って来て良かった。


 路地を走り、先ほど私が投げたビールケースを掴むと女性に当たらない様にだけ気を付けてまた《それ》に投げつける。

 このまま走っても、さっきは結局追いつかれてしまったんだ。

 何か少しでも足止めになるようなことをしないと。