「……こんなんで分かるわけないじゃない」


 茜渚街の入り口とも言えるアーチまで来てから、私はさっき貰ったメモを見てうなる。

 メモにはかなり大まかな地図に、『ここの居酒屋の裏!』と文字と矢印が書いてあるだけだった。

 街へと視線を向けると、何らかの専門店が立ち並ぶ合間に飲食店がかなり多く点在している様に見える。

 入り口付近だけでこれなんだから、奥に行ったら居酒屋なんてもっとありそうだ。


 いや、でも居酒屋の裏ってヒントがあるだけマシだよね。

 そのヒントもなくしらみつぶしになんてことになったら何日かかるか分からないし。

 しかもその間に誰かに盗られてしまったり、ゴミと思われて捨てられてしまったらたまらない。

 鞄を隠した彼女たちを恨みたいけれど、今はとにかくこのヒントをもとにひたすら探さなくちゃ。


 不安と焦りで折れそうになる心を無理やり奮い立たせて、私は茜渚街に足を踏み入れた。