「それでも私の血の結晶があれば《血婚の儀式》で繋がりを強くすることが出来る。……さあ、それを返すんだ朝霞」

「っ⁉」


 伸ばされた大橋さんの手を見ながら、久島先生の目は大きく揺れている。

 どうして? という思いが渦巻いているのが見ているだけでも伝わってくるほどに。


「どう、して? 真理愛さんがあなたの“唯一”なら、どうしてあなたから逃げているの? 相手が吸血鬼なら、お互いが“唯一”となるはずでしょう?」


 動揺しながらも、しっかり聞きたいことを口にする久島先生。

 それに答えたのは大橋さんではなく真理愛さんだ。


「こいつは私の“唯一”じゃないわ!」


 拘束されながらもハッキリと叫ぶ真理愛さんは、真っ直ぐ久島先生を見ている。