「恋華さん⁉ 大橋! 早くして!」


 焦る真理愛さんの声が聞こえ、大橋の口端が嬉し気に上がるのが見えた。


「分かっているよ、真理愛」


 睦言を囁くように真理愛さんの名を呼びながら、大橋さんは彼女の血の結晶を小瓶から取り出そうとする。

 丁度そのとき、部屋の外から慌ただしい音が聞こえドアが乱暴に開け放たれた。


「恋華!」


 私を呼ぶ声に、胸がぎゅうっと締め付けられる。

 嬉しくて、涙が一筋零れ落ちた。


「かい、と……」


 愛しい男の姿が、そこにあった。