少女は、怪物に支配された。
 彼女以外の全ての人間に、いや、彼女自身にさえ牙を剥いていた。
 ひどく攻撃的になった彼女は、他人や部屋の外の環境に触れることを忌避した。
 それでも学校に行かねばならない日はある。
 彼女は嫌々ながらも学校に行く日もあった。
 しかし、彼女には教室が敵であるかのように思えた。
 当時、実際には転校の理由の噂も晴れていたらしいが、彼女はただ、まだ誰かが自分の後ろ指を指しているような、噂話をしているような気がしてならなかった。
 少女は、自ら孤立することを選んだ。
 これが彼女の、彼女自身を守る選択であった。
 学校に行っても、ほぼ毎日一言も話さず帰宅する。
 彼女は自身を守るために孤立した(はず)だが、その孤立がさらなる妄想を呼ぶ。
 臆病な怪物は、社会的な場面ではその姿を全く見せない。
 しかし、姿が見えないだけで、しっかりと少女の思考の中に棲み続けていた。