「えー、と。虫刺されですっ!」

「そこで、嘘つくなよ、あ゛?」

「分かんだろ」と笑って、言いながら、クシャクシャと髪をかく。
私はその光景を初めて見たので、ポカンと口を開ける。

まるで、初恋を抱いた少年のような。

……初恋?

「お前、AoBaにやられただろ」

「さ、さぁ?どうでしょう?」
私は、動揺しながら、魔王様の瞳を真っ直ぐに見る。

「やられたって言え」

「……」

「やられたって言わねえと、上書きする」

「へっ!?……ちょっ!?」

私の首筋に魔王様の唇が付けられて。

「ひゃ……や、めてっ……」

「その声、録っておけば良かった」

録る!?
わ、私の、い、今の声を!?



「ど、どれだけ……、私のことーーーーーー「溺愛するぐらい好きだよ。楓のことを」

もう。やばい。

心臓。

爆発ーーーーーーーーーーーー

「……だから、馬鹿子犬のことを、堕とすのに、何にでもやってやる」


ーーーーーーーーーーーーするかもしれない……!!


「……っ。」

「もしかして、楓は、俺のこと、……嫌いか?」

私はそう言われた時、心の底から、胸の底から、全部の体の底から。

ーーーーーーーーーーーー言いたいと思った。


「わ、たしは、好き、です、魔王様」
そう私は無意識に夜の中、車の中で。

ーーーーーーーーーーーー言ってしまった。好き、と。

言ってしまったとき、魔王様は、首筋に唇を付けるのをすぐにやめて。
私のシートベルトのボタンを押して、すぐに助手席の扉を開けて。

「出ろ」

「えっ?」

私が無意識に言ったのが、ダメだった?

何?……なんか、嫌な予感がする。

「わ、私が……って、ひゃっ!?」

私の腕を魔王様は咄嗟に掴んで。
魔王様の()の、大きな扉に入ることとなった。



「ちょっ……どうしたんでs……んっ!?」

扉をバタンと閉めたと思ったら、その扉に、私の体を押し付けて。


ーーーーーーーーーーーーキスをした。


「まひゃ……んっ…もぉさぁ…ひゃま……」

何故か、私の後ろの首を手で王政さんの顔を寄せていた。

「お前は黙ってろ」
と言ったと思ったら、もっと、唇が来て。

魔王様の舌が入ってくる。

「……んっ……ひぃたぁ、ひゃいってま……ん!?」

「もっと、……もっと、魔王様を溺れさせろ」

今、自分で……言いましたよね!?


ーーーーーーーーーーーー魔王様って!!!



「ま、おうさま?」


「……っ奴隷はそれで良い」

「えっ?ちょっ……んっ「黙ってろ」

待て待て!!!

理解ができないし、怜さんは!!?

「ま、おうんっ、様……、怜さんは……?」

「……あ゛?」

「……こ、怖いです。」

「ほー。お前は、俺が溺愛してんのに、お前は、怜を考えるのかー……勇者だし、俺、嫉妬するわ」

「し、嫉妬……?……ほ、本当ですか……?」
「本当だよ。馬鹿子犬」

……なんか、馬鹿子犬と奴隷を使い分けてません!!?

「怜さんがいないって……珍しいかなーって思って」

やばい。自分でも分かる、目の泳ぎと多すぎる冷や汗。

怒られるのが怖いって言うのも。普通に私は分かってるのに……。

……怖いです。魔王様という名の王政義數様が……!!!


「ほぉ。俺のことより、怜の方が好き、と?」


「わ、私の方が好きですーーーー!!!」


!!!?

と、扉の後ろから、声がするーーーー!!
……だし、灯の声だーーーー!!!?


……何で!!?