もっと、命令したい


「あ、あの?」

うん。これ、何回言うの?

この車で、2度も寝ちゃったんだよなー……。
……じゃなくて!!!

私が聞いた人は、「……」と、ご沈黙で。

本当に、魔王様だなー……。

「……ん?何?……俺に見惚れてんの?」

えっ?

「み、見惚れてません!」

やばい。見惚れてない。
だって、本当の魔王様みたいー。なんて、知られたら……!!

絶対!怖い!

「へー……本当に?」

「ほ、本当です!」

……これは真実!

「ふーん……俺をじーっと見てたから、見惚れてたんだと思ってた」

「はいっ!?」

……だけれど、魔王様に見惚れるのは、
私以外だったら、絶対、見惚れるだろう。

車のハンドルを片手で握り、夜の明かりが照らされる中、綺麗な顔が映し出されて。

……ん?ちょっと待て。

何で、私。気づかなかったんだろう。

今、私は何処に向かってるの……?


よし。話、切り出そう!

「あの、魔王様、何処ーーーーーー「俺の家」

「へっ!?」

な、ななな、何で!?
お、お、王政さんのお家に!?

「な、何で、行くんですか?」
「さぁ?何だろうな?」

ニヤッと笑う、王政さんの横顔。
夜だからか、明かりがたまーに来るから、ドラマみたいになって。

私も、本当に見惚れてしまう。

「あ。見惚れてた。楓」

「……っ」

「図星だな?」

「……ちがっ「楓さ、嫉妬しただろ?」

私の質問を答えろーーー!!
話、変えるなーーーー!!

……というか!

「私は嫉妬なんてしてませんっ!失恋をしたんですっ!」

あっ……。何、言ってんの、私。


今、失恋したって言った?