今は、先輩に連れ出されて、人気のないところにいる。

「ねえ、楓。」

「はい」

「俺のこと、好き?」

「えっ?」

「やっぱりか」

「わ、私、先輩に嫌われるようなこと、しました!?」

な、何かしたかな?
私の憶測が変?
私が中学生の頃から、大嫌いだった?とか?

「違うよ、楓」

「……?」

「今からさ、俺の好きな人のお話をするね」

「えっ?……な、何で、今ーーーーーー「いいから、黙って聞いてろ」

「は、はい」

久しぶりの先輩の俺様。
魔王様は、俺様ずっと、ぶっ放しだったけど。

「今もさ、王政義數のこと、考えてた?」

「えっ!?何で分かるんですか!?」

「んー……楓の顔が一段と可愛くなったから」

「……か、可愛い……」
少し、私は引き気味に、先輩を見る。

「でね。俺の好きな人は鈍感だけど、イケメンでも、普通の人のように接してくれてさ、すごく嬉しかった。
俺の顔より、俺の声が好きって言ってくれてさ、すごく嬉しかった。
……なのに、俺は、好きな子に、好きって言えなくって、ずっと意地悪をした。
月日が経って、その子は王政義數を好きになってさ。」

……あれ?これってーーーーーーーーーーーー


「王政義數より、俺の方をもっと向いてくれれば、良かったのにね。……楓」


ーーーーーーーーーーーー私?

そう、私が結論に辿り着いたとき。


ドッパーーーーーーン!!

大きな音がこの町全体に響いた。

花火大会が始まったようだ。

……だけどその音にびっくりはしなかった。
だって、今、先輩に言われたことに頭が追いついていないのだから。