「これも、美味しそうですね!!」

「うわぁ〜!!金魚、綺麗!!」
私はわちゃわちゃと興奮状態だったけど。

「……ねえ、楓?何で、買わないの?」

「えっ?」

「俺さ、お金、準備してきたんだよ?」

そ、そうだった。
先輩に言ってなかった。

「わ、私は花火見るだけでいいのでー……」

「へー。……花火大会見る“だけ”?」

「……?はい」

なんか、嫌な予感がする。
私は待ち合わせの時間には間に合ったけど、今はなんだろう!!?

この先輩が、マスク付けていても分かる、意地悪の笑み!!


「先輩はさ、頑張ってさ、服装カッコよくしたのに」

一歩、一歩、踏み出してくる先輩の足は、私に焦りをもたらしていて。

「……い、いや、カッコよくないです」
私がそう言うと、先輩は、

「そう?じゃあ……」
と言いながら、私の片方の耳に近づいて。

「何、着てて欲しい?」

「ひゃっ!?」

私の体と先輩の体が密着して、先輩の爽やかボイスが私の耳に聞こえる。
くすぐったくて、綺麗な顔が近くにあって。

私は眩しいと、先輩に言った。

「……これでも、赤くならないんだ」

「……えっ?」

「今から、少しだけ、時間をちょうだい?」

「えっ?」

「王政義數と会うまで、まだ、時間、あるでしょ?」

えっ?何で知ってるんですか?

ーーーーーーーーーーーー先輩?