【side 灯】

ーーーーーーーーーーーーコンコンっ。

ん?誰だろう?

私は、「ん?なーに?」と扉を叩いた主に尋ねてみた。
だって、ここにいるのは、私のお母さんかお父さんか………楓しかいないから。

「あ、あの…さ、良い?灯?」

……えっ?楓?

何で?
私はすぐに勉強椅子から立って、自分の部屋の扉を開けた。

扉の前に楓がモジモジしながら立っている。
しかも、顔を少しだけ、赤らめて。

ふっ……!

久しぶりだなぁ。この顔。

兵雅を好きだったときも、こんな顔だったけ……。
思い出すなぁ〜。

「……どしたの?」
少しだけ、私は扉の前の壁に寄りかかる。

そして、私の心の中は笑っていて。
楓が可愛くて仕方がない。

「わ、わた、私、さ。」
「うん。落ち着いて、言ってね?」

戸惑っているとき、やっぱり、落ち着かない様子で、言葉、噛み噛みになるか。

まぁ。可愛い。から、よしとして。

「わ、私、ね?」

「うん。」
私は平常にコクリと頷く。

「魔王様のことが……好きなの」

……?
ま、魔王様?

誰?
Who is that?
ダレデスカ?ソノヒト。

『アカリニハオウセイヨシカズノイミョウハキカナイヨウダ!』

?何?今の。私の頭の中が、ファミコンみたいになったけど?

じゃなくて!!
〝魔王様〟って誰!?

「あのさ。」
私は少し気まずく楓を尋ねる。

「う、うん」
まだ、落ち着いていない楓。
だけれど、ちゃんと聞いてくれている。

「魔王様って……「王政義數さんです」


「ええええええっ!???」


そうなのだ。秋風楓は、塔堂灯に〝魔王様〟というニックネーム=国民的人気俳優〝王政義數〟だと。
言っていなかったのだった。