先輩の怒っていたときの俺様や冷血人間は見たくないし。
王子様スマイルも見たくないから。

行け。行け。


「……っお前なぁ?覚えとけよ?」
そのとき、先輩の顔が王政さんの顔に見えた。


「……っ。」



王政さん……みたいだな。


ーーーーーーーーーーーーーやばい。ダメだ。


お仕置きなんかあったけ。

ーーーーーーーーーーーー意識しちゃ………ダメ。


「……?…やっと、意識したの?俺のこと?」

「し、してない」

下唇で噛みながら、違うを表現するけれど。

「はぁ〜っ。堕としがいある」

伝わってないみたいで。



……ポジティブシンキングボーイ!

頭の中でそんなことを思っていたけれど、まずは、先輩を……!!


「そんなこと言ってないで……!!他の人も……見てください!!」

うん。うん。
これが一番……って、私って、こんな声、出せたっけ?


なんて、疑問に思った私。

だけれど、先輩をまず、違うところに送り出すところの方が先!!


「……まぁいいや…行って来る」

よしっ!

……行ってらっしゃいマセ。
棒読みの言い方。

やり返してやったわ。


さぁっ!早くやろ!!

鉛筆を持ち直して、板書をする。
大事なところは、蛍光ペンで文字の下を引くか、赤いペンで書く。

問題が出たけど……大丈夫だった。

応用問題も普通だ。

「大丈夫?」と先輩に言われたけど、「大丈夫です」ときっぱり断った。

もう。先輩に振り回されるのは……イヤです。


『ねえ。俺と一緒に放送委員会、入らない?』

『ねえ。オレンジジュース持って来て。』

どれだけ……辛かったか。
兵雅と付き合ってたときだったから、兵雅に勘違いされた。

『ねえ、あの人だれ?楓に付いて来ている人。……もしかして、楓の彼氏?ひどいなぁー……』

なんて。
……もう、このとき=兵雅と付き合っていたときは、私のことは鈍感女しか思っていたときだったから。
でも私は気づいてなかったので、すぐに反論をして、別れさせないようにしていた。

だけれど、先輩は。

『俺、好きだなー……』

付き纏って来ていた。

『俺さ……王政義數より、イケメンになるから』

あれ?なんで、中学のときに、魔王様が……




出るの?



心の中で疑っても、答えは返ってこない。
だって、数学の時間に考えることではないし、灯に聞いてもきっと、忘れているだろう。

王政義數は……中学の頃、私たちは知らなかったから。

灯は、私が魔王様と同居していたときに、超調べたらしいけど。

灯も王政義數のこと中学で見たことない?と聞いていたけれど。

見たことない。

うん。見たことない。


────────キーンコーンカーンコーン。

このときは……そんなにうるさく聞こえなかった。……不思議なことに普通に聞こえた。