もっと、命令したい


この顔がまた本当の魔王様に私には見えた。

本当の魔王様に見えるということは……覇気(オーラ)がすごいのでは?と思うが、それは置いておこう。


「………はいぃ…」

私は、王政義數(魔王様)の覇気が凄すぎて、声が少しだけ震える。


「……おい。AoBa……あ゛ぁ゛?お前が喧嘩売ってきたんだろうが」

こ、怖い怖い。
この声がしているということは……先輩も……怖い顔、声してるってこと……?

……こ、怖すぎ!!!

鳥肌が面白いくらいに多く立つ。

「……?お前、楓に変われと?はぁ〜。お前も…………っチッ」

し、舌打ち?!
な、何を話してる……の?

舌打ちもするから、もっと背中から寒気と怖気が来る。

「……楓。変われだってよ。」

いやいや!!!待て待て!!
今の状況!!

腕、塞がれてんだからっ!!

「……無理です、よ……私、腕塞がってんです……んっ!?」

『……ぉい……楓に変われって……』
私の携帯にかけている電話が……耳に当てるのではなく、スピーカーに鳴る。

そのことはもうすぐ気づくけれど……、今はそれどころじゃないっ!!!


く、口が………


「……っんふ……!」


重なってんだから……!!


……聞こえちゃう…!!
先輩に……!!

「んっ……ま、魔王様……?」

短く終わった演技ではないキス。


私はこのキスが……寂しかったというか。

流されたと私は思った。


だけど、その思いに私が気づくのは………、


「電話、当てろ」


もう少し先。


「へっ?」
急に、私の顔の真ん前に差し出される、一瞬だけ、私の携帯だとは思わなかった、私の電話。


「……も、しもし?」

私は私の腕が塞がれたまま、腕と耳の間に携帯をくっつける。


『あ、楓?……急に帰ったから、びっくりしたし、安全で良かった』

「……っはいっ」

私は笑顔で、電話をかけている先輩に答える。

この声は…すごく爽やかな声で。
安心したなどと、相手の方に声をかけると、胸がトクンと鳴る。

私もその一味だ。

……その私の笑顔を魔王様は、見たのか、分からないけれど。

「……お仕置きはこれからだ」

「へっ?」

小さい声で、私の耳元で言う声は……さっきの先輩の爽やかな声よりも……
胸がトクンと言うより……胸がまた、キュンっと鳴って、胸が締まった。


『……?楓?また通信被害?でも……待てよ。王政義數が出ていたということは……王政義數のもとにいるってっことじゃねえかよ……!!!』
なんて先輩の心配の声が私の電話の向こうで言っているとは露知らず。