「……んんっ…?」

私の目が開いて、視界が車内の天井になる。

久しぶりの光景。

どうやら、私は、助手席で、ぐーぐーと寝ていたようだ。
……まぁ要するに、窓に頭をつけて、寝ていたようだ。


はっ!!

……私は!!王せ…「おはよう。楓」


ニコッと爽やか笑顔で私を見る魔王様。

車内の天井から一気に、魔王様の顔へと私の視界は染まる。

「……っな、んでっ…?」

やばい……っ。

かっこいい……。

じゃない!!!じゃない!!!
王政さんがいることなんて分かってる!!!

「あれ?かっこ良いことじゃなくて?」
なんて王政さんは、言いそうだけれど、それは胸に閉まって。


モデルの撮影で、王政さん、いや、魔王様に会って……その次は…思い出し、たく、ない。

私は頭の中を整理する。

今日、2回目の頭の中の整理。

うん。
今日は何があったけー。

なんて考えながら、先輩と会った時間に頭の中は戻る。


私が頭の中で戻っていたとき、魔王様は?と言うと。

魔王様は、エンジンを抜くための鍵をドライバーの隣から抜いていて。
でも、その前に、魔王様はわざと、首を傾げて、

「あれー?俺の声……」
と言いながら、私の耳元までやってきて。


……聞こえてる?



と小声で低めの声を出して、私に意地悪をする。

だけれど、意地悪をしているなんて、私は、気にならず。


「……ひゃあっ」

とまた、私は、変な声を出す。


「……おはよう。楓」

「……もう1回、言わなくて良いです!!」

「……じゃあなんで、俺を見て、おはようって語りかけてくれねえの?」

……っ。

「俺のこと……そんなに嫌い?」


『嫌い』

王政さんの口から、私は、聞きたくもなかった。


「……図星の目」

「……」

もう、何も言えない。
だって、王政さんが言っていることが、最もド正論だから。

図星だから。

「へえー……本当に……図星なんだ」

「……ず、図星です」

「……お前の口から、聞きたくもなかったけども…」

「……っそれは…王政さんのことを…「思ってのこと?」

「俺のことなんか、気にしなくて良い……
……楓が、お前が……俺の隣でいるだけで良いんだよ」

「……っ!?」

「……というか、王政さんってなに?
……本当に婚約破棄してから……俺の呼び方は、苗字読みになったんだ?」

「……は、い」

王政さんと話せて嬉しいのか、嬉しくないのか、
悲しいのか、分からない。

だけれど、王政さんを見ると、さっき言ったものが、全部込み上げてくる。

「お、うせいさん……っ」

「……何?」

さっきのドS面から、すごく優しく、爽やかそうな声で、私に語りかけてくる。

怖いというか。


「か・え・で?」


嬉しいというか。

「……おーい。大丈夫?」

悲しいというか。


「……と、いうか、ここ、どこ、ですか?」


ここを……疑っちゃうというか。

はい。ここ、どこか、分かりませ……分かります!


ここは……もしかしての……?

「……楓の家」


違う。そんなわけない。


「……嘘ですよね?」
自信を持ちながら、私は王政さんに問う。


「あ。バレた?」

「バレるもなにも、ここ、王政さんの家じゃないですかっ!!」
私は窓から、魔王様の家、いや、城に指を指して、魔王様に言う。